!attention!
※映画「純黒の悪夢」編
※相変わらず無茶苦茶する
※K察学校組がみんな生きてる世界線
※色んな人の色んな仕事を奪って分け合ってる
※お付き合いしてます

「よお、元気してたか」
名前ちゃん、久しぶり」
「お久しぶりです、伊達さん、萩原さん」

 米花町、毛利探偵事務所のすぐ近くに私のお店はある。夜でも気温の高い季節がやってきて、お店に来るお客さんはみんなハンカチで額の汗を拭っている。いかにも夏らしい。そんな暑さなど全く気にもしていないという涼しげな顔で帰ってきたのは、陣平さん。そしてその後に続いて遊びにきてくれたのは、萩原さんに伊達さんだ。

 伊達さんが、涼しいと笑いながら、カウンターに座る。テーブル席の方が涼しいし、くつろげると言ったら、萩原さんに「名前ちゃんの顔が見たいから」と言われた。不覚にもときめく。イケメンは総じて好きだ。憎む理由がない。陣平さんに頭を叩かれる萩原さん、それを豪快に笑う伊達さん。これは平和の象徴である。

「今日は3人だけなんですね」
「まあ、あいつらは忙しいからな」
「1年に1回都合が合えばいい方でしょ」

 公安組の2人にはやはり忙しいらしい。いつもは声をかけても断られるというが、今回に至っては声を掛ける余裕すらなかったそうだ。さすが公安。私が彼らが公安であることを知っていることは秘密なので、心の中で労った。どうか無事でいて欲しい。イケメンがこの世界から失われるのは罪だ。

「そういえば、昨日も高速道路のところで事故ありましたもんね」

 派手にカーチェイスが行われていたとか、車1台爆発したとか。ネットの噂は玉石混淆。何が真実かは分からないけれど、それが原因で停電したことは確かだ。この世界では、何が起きてももう驚くまい。どうせどこかの誰かが迷惑な事件を起こしたんだろう。

「はあー、ごちそうさま」
「やっぱ人の作った飯は美味いね」
「萩原さんだってその気になればすぐ恋人できるでしょう」

 前に恋人と別れてから随分長いという萩原さん。こんなに格好良くて優しくていかにもモテる要素をコンプリートしておいて、一人であるという方がおかしな話だ。

「いやぁ、やっぱり二人見てると俺も真剣な恋がしたくなるわけよ」
「嘘やめろ、揶揄ってる癖に」
「もう陣平ちゃん、それは愛じゃん、愛」

 萩原さんが陣平さんにどっかの釜爺みたいなことを言っている間、私は皆さんの食べたお皿を片付ける。最後のお客さんの勘定をすませて、ドアにかかってopenをひっくり返した。今日もおしまい。お疲れ様でした。

「あ、そういえばこれ渡そうと思って持ってきてたんだよ」
「なんだ?」

 伊達さんが、おもむろに鞄から取り出したのは何かのチケット2枚。そこには可愛らしいイルカのイラストと一緒に『東都水族館』の文字。東都水族館? 東都水族館って言ったら、老朽化して最近大規模リニューアルしたと聞いたけど。

「なんで伊達が水族館のチケットなんて」
「ナタリーが友達にいっぱいもらったんだよ、俺たちは2枚でいいからやるよ」
「へえ、そんなに」
「なんならまだあるぞ、萩原にもやるか」
「お気遣いどーも」

 水族館。好きか嫌いかで言えば好きだけれど。

 渡されたチケットを見ながら、必死に考える。コナンの世界でアミューズメント施設は正直危険がいっぱいだ。大体が爆発されるか、人が死ぬ。ジェットコースターに乗ったら首がちょん切れるような世界なのだ。用心に越したことはない。

「――行くか? 水族館」
「え?」
「好きだろ、アンタ。そういうの」

 でもなあ、東都水族館。思い当たる節はない。私が知ってるのはトロピカルランドくらいだ。新しい何かに出てくるか、まるっきり関係ないという説もある。こればっかりは仕方ないだろう。

「うん、行きたい」
「だってよ。サンキュー伊達」
「ありがとうございます」

 それを見て、萩原さんは頬杖をつき、はーあとため息を吐いた。早く彼にも素敵な恋人ができてほしい気もするし、このまま誰にも縛られない彼でいてほしい気もする。幸せならなんでもいいけどね。