青い空に、赤色の風船が飛んでゆく。うっかり手を離してしまった子供の泣き声が聞こえてくるみたいだ。うん、わかるよ。悲しいな。私も結構悲しい。なんせデート中に置いていかれたのだ。しかもこんな周りがハッピーに満ち溢れた遊園地の真ん中で。ハハッ 帰ろうかな。
「あれ、名前さんじゃ?」
「ら、蘭ちゃん?」
「名前さん、何してるの?」
「えっと、デートだったんだけどね……」
目の前には蘭ちゃん園子ちゃん、そしてポニーテールの可愛らしい子はお初の御目に掛かる遠山の和葉ちゃんだ。事件のかほり。ていうか、お姉さんたちのリストに光るそのストラップ。ああ、爆弾ですね。
「何、置いてかれたァ?」
「いやあ、事件起きちゃったみたいでさ」
「ったく、どいつもこいつも彼女放り出して!」
「まあまあ落ち着いてよ、園子」
私よりなぜか激おこの園子ちゃん。若いっていいな。私、もはや怒る前に悲しんじゃってるもんな。苦笑いしていると、輪から外れていた和葉ちゃんが、困っていることに気がついた。
「こちらは名字 名前さん、私の事務所の裏でレストランをやられていてね、仲良くさせてもらってるの」
「初めまして」
「初めまして、遠山和葉です 蘭ちゃんたちの友達で」
「ああ、そうなんですね」
こうしてまたキャラとの関わりが増えてゆく。しかも陣平さんの知らないところで。それでさっきのはどういう意味か、と聞かれたので、恋人が警察関係者だと答えると、ああ!!と盛大に顔をしかめられた。そういえば、和葉ちゃんはお父さんが大阪府警の偉い人だったっけ。その辺りは私よりも思い当たる節がありそうだ。
「そうだ、名前さん これあげる」
「ん?えっ……エエーーッ!!??」
「私使わないから、これ使って夜まで遊んでよ」
園子ちゃんが、ガサガサカバンから何か取り出したと思ったら、例の爆弾リストバンドで、断る間もなく腕にハマってた。その優しさは、いつも私を苦しめる。なんでこんなことになった???
「恋人待ってる間、名前さんもケーキバイキングどう?」
「いいね どうですか、おいしいって有名らしいですよ」
「いや、あーいいね でも、今お腹一杯で」
というか、それどころではないのだけど。そうだよね、この二人はこれが爆弾って知らないんだもんね。どうしたもんか。
「いいじゃん、行こうよ」
行きたいけど、行ったら私の腕とその他諸々がバラバラになってしまうんだな。私だけじゃなく、蘭ちゃんと和葉ちゃんも。そう伝えずに、どうケーキバイキングを回避すべきか。なんか曖昧な感じで、のらりくらり話を伸ばしてみるが、限界がある。限界しかない。
「あれ、今呼ばれたよね?」
「なんかうちの名前も呼ばれたわ」
「ごめん園子、一人で行ってもらってもいい?」
「いいって、子供たち心配だもんね」
「じゃあ名前さんも、行きましょう」
「う、うん」
いやあ、哀ちゃんグッジョブ。でも私ほとんど面識ないぞ。