どうも歩く死神の友達・走る爆弾娘こと名前です。またまた爆発に巻き込まれています。ここは本当に日本か?

私の記憶だと爆弾爆発は0:00のはずだったんだが、22:00に爆発しやがった。おかげで入口がひしゃげて開く様子がない。閉じ込められたという訳だ。しかもユメいないし。もちろん蘭ちゃんだっていない。これは本格的に終わりなのではないかと頭を抱えていた。爆弾の入った紙袋の横で。

見つけたのは偶然だった。こんなあからさまに怪しい紙袋、どうして放置されてたんだと小一時間問い詰めたい。変に誰かが触って爆発したらバッドエンド間違いなしなので、見守ることにした。救助隊が来ると信じよう。私は過去、爆弾をぶん投げた女だ。爆弾はともだち。平常心、平常心。

……と、誰か来るんじゃないかと思って待っていたけど、もう0:00まで15分少し。死んじゃうんだあと泣く女性につられて、私も泣きたい。死んじゃうんだあ。

──名前 「へ」
名前!!」

わわわ。陣平さんだ!

「ここにいる!」

 pipipi
「はい」
『馬鹿野郎、なんでそんなとこいるんだ』
「だって、ユメが」
『あの姉ちゃんなら外で会ったぞ』
「よ、よよ良かったあ」

瓦礫の下に潰されてたりしてなくてよかった。あの子まあまあ鈍臭いから心配してたのだ。陣平さんの声とユメの安否を確認し安堵で涙が。馬鹿野郎って言われたの、陣平さん助けたとき以来だ。懐かしい。あのときと同じくらい危機的状況にある。もう、なんで。

『そんなことより、爆弾は』
「見つけておきました」
『アンタ、ハサミ持ってるか』
「嫌」

その展開は嫌だ。私は蘭ちゃんじゃない。ソーイングセットはもしものために持っているけど、だからって無理すぎる。私はモブ、ヒロインじゃあない。

『俺が指示出す、アンタは切るだけだ』

そんな言葉には騙されたくない。指差しで教えて貰えるならともかく、色と場所だけで間違いなくコードを切るってよくよく考えたら、とんだ離れ業だ。蘭ちゃんスゴい。

「失敗したら死ぬんだよ」

私のせいでここいらドッカン。
木っ端微塵になる。

『アンタが死ぬなら、俺も死ぬ』

泣いた。私は弱虫だから簡単に泣く。人の目のないところなら特にだ。

「……ずるいなあ」
『やれるだろ』
「やりますよー」

私のために、陣平さんを死なせる訳にはいかない。ひとりじゃないから。──女は度胸だ。

「聞こえる?」
「ああ」

ゆっくり紙袋をもって入口の方へ。腰を下ろすと、近くに彼の声が聞こえた。紙袋をそっと破く。彼の指示通り、カバーを持ち上げて外した。カバンからソーイングセットを取り出し、ハサミの準備もok。その時は着々と迫っている。

「んじゃまあ、やりますか」

 あと、12分

黄色のコード、ピンクのコード、緑のコード。きっと森谷帝二はこれを工藤新一にやらせるために用意したのだ。それを今、いるはずのないふたりが解体している。恐怖は限界点に達したのかあまり感じない。というか集中しないと死ぬからだ。

「陣平さんはいつもこんなことしてるんだね」
「ああ」
「すごいなあ」

私には、絶対無理だ。今だって、口から心臓が飛び出しそうなほどドキドキしている。

「最後、黒いコードで終わりだ」

私は小さく息をつき、ここまで来れたことを喜んだ。言われた通り、黒のコードを切る。タイマーは止まらない。知っていたよ、糞野郎。

「タイマー、止まらないよ」

「あ”?」
「あと、3分15秒」

ピッピ、音を立てて数字が減っていく。自分の目の前でこれが行われるのは不思議な気持ちだ。あと3分15秒、私たちの命の残り時間である。陣平さんの少し慌てた声が聞こえて、私は残った青と赤のコードを見つめる。

「コードはあと2本。どっちかがタイマーを止めるコードで、片方は起爆コード、ってところかな」
「……だろうな」

どうしますかって言ってみたら、陣平さんは笑った。死ぬか生きるか、私の腕に懸かってる。

「アンタの好きな方を切れ」
「そう言うと思った」

0:00を知らせる、鐘の音。残り時間は3分。これは、新一のために残された時間。ハッピーバースデー名探偵。この時間は、彼と私のために使わせてもらおう。

 ──1分39秒

ドアの向こうにいる陣平さんの息をする音が聞こえる。静かだった。煙草、どうせ吸ってるんだろうなあ。カチカチ、ライターいじる音聞こえたし。

名前
「ん?」
「大丈夫か」
「そうね、落ち着いてる」

陣平さんの声が聞けたからかな。来てくれてありがとう。会いたかったよ。

「とんだゴールデンウィークだぜ」
「……でも、陣平さんに会えたよ」
「──」
「どうせなら、顔も見たかったけど」

 ──55秒

「それは、あの世でな」

縁起でもないことを言う。笑顔でサヨナラ。