GWも佳境を迎え、ニュースではUターンラッシュが騒がれている。ここ数日は、米花町に置いていかれたお父さん連中の憩いの場として大変繁盛していた。みんな、仕事にかまけて家族サービスを怠っているから、いざという時に連れて行ってもらえないのだ。同情するまい。よって、おじさん連中の家族と仕事の愚痴処理に忙殺され、ニュースもあんまり見れていないし、結局やっぱりどこへも行けていない。残念。たくさん稼げていたので、まあいいとするしかない。落ち着いたら、陣平さんと旅行にでも行きたいなあ。
今夜はユメと映画を見に行く約束をしていたので、買い出しを今のうちに済ませておこうと車で駅前へ。う~ん、交通量が多いなあ。ヤダヤダ。駅も結構賑わっているし、みんな最後にどこかに行く人もいるのかな。羨ましいよ。
……車の横、とんでもないスピードで駆け抜けて行ったのはスケボー。あの紺のジャケットはコナンくんではないのか。いや、名探偵。そのスピードは犯罪。多分だけど切符切られる。危ないので免停にしてほしい。なんちって。というか、子供にあんなもの持たせる阿笠博士にも保護責任を問いたい。全国の小学一年生の中でも無茶するレベルだとトップレベルである。
「……事件の予感」
どうか、彼に幸あれ。
じゃなくて、アンラッキー。
目の前のタクシーがいきなりストップしたと思ったら、車の陰から飛び出して来たのは歩く死神だった。嘘ぉ。タクシーの運転手さんと入れ違うようにタクシーの中へ。このシーン見たことあるぞ。なんだっけ、どれだ。どの話だ。思い出せ!じゃないと命が危ない。
「名前さん!?」
思い出す前に見つかった。まじかよ。
「名探偵、そんなに慌ててどうした——って」
「丁度良かった!車出して!!」
早く!と名探偵(6)に急かされ、急発進。良い子はマネしないでね。名探偵の尋常ならざる表情、手に持ってるピンクのケージ。全てを思い出した私は天を仰いだ。と思ったら低い天井だった。記念すべき劇場版第1作目が真横で繰り広げられている。それあれだろ? 爆弾だろう? 何が丁度良かった、だ。最悪のタイミングだ。完全に巻き込まれている。急に私の命が風前のともし火である。
「名探偵、それ何!」
一応、聞くよ。義務として、私一般人だからね。
「爆弾!もう時間がないから、「高速の先の空き地ね!ラジャー!!」
ひゃああああ。涙をこらえながら、エンジン全開。
「死にたくない……」
こんなとこで死にたくない。絶対陣平さんに叱られる。もう嫌だ。私のせいじゃないのに。歩く死神が私に危機をもたらしたのだ。
「動き出した!」「ひええ」
空き地?それ、この道の向こう?この道一通なんだけど。
「名前さん!!」
「わかったよ、逆走するぞ!松田さんゴメン!」
法を!犯します!!
「名探偵?!」
「名前さん、早く逃げて!」
彼の良くないところはすぐに無茶をするところ。それと、自分が小学生っていう設定をすぐに失念するところ。気づかないフリって見た目ほど簡単じゃないのだ、名探偵。つまり何が言いたいかと言えば、普通の小学生は爆弾持って爆走したりしないのだ。うわあ、ぶん投げた。走った。私もさっさと逃げなくちゃマズイよね。サイドブレーキR、急発進。
ドッカーン
人生3度目の爆弾事件。こうして、私の車は無事故障する。