そう言えば松田さんと萩原さんはどうなったのか、気になる皆さん。安心してほしい。残念ながら仲良くなった。不本意である。

「そしたらこいつさぁ、――」
「うるせー」

爆弾事件から早いもので2年。ふたりはすっかり常連さんになった。忙しいはずなのに、こうやって時間を見つけてきてくれる。イケメンは目の保養だけど、キャラと関わるのはなあと思っていた。それが半年前。でもよく考えたら、すでに原作は改変済みだし、死んでるはずの二人は原作にほぼ登場しないと言っていい。と言うことは、このふたりと関わっても大丈夫なじゃないかと結論付けた。結構無理やり。だって、美味しい美味しいと食べてくれるお客さんを無下に扱うことはできない。嬉しいもん。

「松田のやつ、名前ちゃんの店に通ってんの隠してんだぜ」
「余計なこと言わなくていいんだよ」
「先輩どこ行くんですかって後輩に言われてさ、『どっか』って。僕も行っていいですかーって聞かれたら即断ってんだよ。小せえなぁ」
「お前まじで黙れ」

萩原さんは楽しそう。松田さんはペラペラ自分のこと話されて迷惑そう。自分のこととかあんまり話さないし、好きじゃないんだろうなとは思う。萩原さんはそこらへんも分かっててからかっているんだろうけど。男の友情。美しいよ。「トイレー」ひらひらと手を振って、萩原さんが立ち上がった。私はビール瓶をもう一つ取り出して、どうですかと聞く。ああと頷かれたので、蓋を開けて注ぐ動作をすると、ちゃんとグラスを上げてくれた。

「……店はどうなんだ、」
「まあそれなりにって感じですね。赤字ではないですよ」

めちゃくちゃ儲かっている訳じゃあないが、一人で暮らしてやっていくには困らない。ちょうどいい幸せだった。

「そうか」
「はい」

松田さん、イケメンだなあ。サングラスもいいけど、ご飯の時は外すから、やっぱり外した方が好き。顔がいいんだもん素敵。

「悪かった」
「え?」
「連れてきた方が良かったな」

売上のこと? そりゃあお客さん増えたら嬉しいけど、警察関係者の知り合いは増やしたくないのが本音である。

「お二人がこうして来てくださるだけで十分嬉しいです」

眼福。それに、ふたりとも本当に優しくて、特に松田さんはお昼に来てくれたりもするし。自分の空間を大事にしたい人だろうから、あんまり周りに言いたくないんだろうなってわかる。だから、本当に。

「いつも、ありがとうございます」

松田さんは、立ち上がると、グラスを置いて、トイレの方へと歩いてゆく。すれ違いに萩原さんがすごく楽しそうな顔をしていたのは、なんだったんだろう。

「いやあ、あいつがねぇ」
「どうしたんですか?」
「まあわからなくもないけどねぇ」

話通じない。?を浮かべる私に、萩原さんは綺麗に笑って見せた。やだあ照れる。仲良しになったとはいえ、イケメンの破壊力たるや。いつも私に新鮮な気持ちを届けてくれる。ありがとう。

萩原さんは私の作ったカリカリチーズを食べて、美味いよって言った。ありがとうございますって言えば、アイツもそう思ってるよ、って。アイツ?松田さんのことか。

「あんまり自分のこと言わねーけど、本当に思ってるはずだ」
「大丈夫ですよ、ちゃあんと伝わってます」

美味しいものを食べて、美味しいって顔をしてくれる。それに松田さんは一人の時は割と美味いとか何とか言ってくれるのだ。これは萩原さんには秘密かな。

「……そうか、良かった」

「何話してんだよ」
「お前の悪口」
「また、…」
「ねえ、名前ちゃん」

ふふ。笑って、そうですね、なんて。ごめんなさい松田さん。私すごく楽しいや。

「そういうば名前ちゃんって彼氏いる?」
「残念ながら」
「そっか、良かったなあ松田」
「ほんと死ね」