久しぶりに驚いたことがある。人生2回目も、女盛りを過ぎ、相変わらず彼氏もできず、周りは続々と結婚ラッシュを迎え、ユメとともに取り残された。仕事ばかりが順調ですどうも名前です。

人生2回目ともなれば、そう簡単に私は驚かない。だって一回死んでいるし、神様ともご対面した。人は死んだらどこへ行くのかという疑問に正しい答えを出せるのは、この世で私だけである。そんな私を驚かせるびっくり仰天なことがあったのだ。とうとうというか、いよいよというか、主人公を発見した。米花町に越してきたばかりの頃に、工藤宅と阿笠宅を見つけて絶望の淵に立たされたことは前述の通りであるが、その日から私はあっちには近づいていない。だから出会うこともなく、彼は今頃元気だろうかと思うこともなく、過ごしていた。昨日まで。

「ここよ、ここ!」
「店は逃げねーつぅの」

楽しそうな男女の声。この声のトーンはリア充に違いない。爆発しろなんて思わない。人生2回目、人とは余裕が違う。前世で生きた年数よりもう長くこちらの世界では生きている。このままいけば平均寿命くらいは全うできそうだ。「こんにちはぁ」カランカランと音を立てる。顔を覗かせたのは、まだ幼気な少女と少年。間違いなく、工藤新一と毛利蘭である。

いつかはこの日が来るかもしれないと思わなかった訳でもないけど、来たら来たでびっくりする。いらっしゃいませと言うと、蘭ちゃんはとても楽しそうに新一の腕を引いて、二人用のテーブルに座った。そんなにうちに来るのを楽しみにしてくれて嬉しいやら悲しいやら。まだ小学生くらいだろうか、この歳で子供だけでお店に入るとは、ませてるなんてレベルじゃない。私が小学生の頃はサイ○リアしか行ったことなかったぞ。

ご注文はどうしますかと聞くと、蘭ちゃんはハンバーグランチ、新一は日替わりのAランチを注文した。松田さんがよく頼むやつ。と言うかあの人、メニュー見ないで「Aランチ」って言うからな。よくないと思う。

「はい、少々お待ちください」

今日のAランチは、ホワイトソースのオムライス。母が残したメニュー帳にあったものをアレンジしたものだ。作り置きのチキンライス。卵をフライパンに落とす。美味しそうな卵の焼ける匂いと、ハンバーグの入った鍋からグツグツといい音がしてきた。蘭ちゃんと新一はなにやら楽しげにお話中。微笑ましい。彼が未来の死神とも知らずに、常連さんもニコニコと見守っている。まあ私もほっこりしてるけど。だって、子供の頃の二人可愛い。

「お待たせしました」
「美味しそう。……!」

うん、蘭ちゃん天使。ベルモット姉さんにマイエンジェルと言わせるだけはある。

「熱いから気をつけて食べてね」
「はい、ありがとうお姉さん」
「いいえ〜」

蘭ちゃんがフォークを、新一がスプーンを。二人は一口食べると、美味しいねと言い合った。新一はとても優しい目で蘭ちゃんを見ていて、どうしてあの歳であんな顔ができるのか親譲りか分かります。格差ってやつ。よく知ってる。

「とっても美味しかった!」
「ありがとう、嬉しいな」

蘭ちゃんはニッコニコである。それを見て我氏と新一もニッコニコである。
また来てもいいですか?と聞く蘭ちゃんが天使すぎて、主人公お断りなんてことは、とてもじゃないが言えなかった。人間だもの。「もちろん」また来てねと言えば、うんと力強く頷いた。もう英里さんは家を出て行ったあとだろうし、家にはあのダメ親父だけでさぞストレスだろう。わたし小五郎さん大好きだけど、一緒に住むとなると話は変わる。もう家事って蘭ちゃんがやってるのかな。興味はあるけど、聞いたらおかしいし。まあいいや。