宴は朝方近くまで続いたらしい。途中で眠る人、朝まで飲み続ける人、いつの間にか部屋に帰った人。私は適当なところで、エースくんに部屋に戻された。「野郎の中に残しておけない」ってセリフ、グッときたよ。ありがとう。
そして朝。若干頭がぼーっとするけど、私はたくさん飲んでないから皆さんほどは酷くない。みんな、ゾンビみたいな顔してる。朝ごはんを終えて、甲板に出ると、ハルタさんにエースならアッチだと教えてもらって、船尾の方へ。縁に凭れて、具合悪そうにしてるのがまさしく彼である。
「大丈夫?」
「……名前か」
「水持ってこようか」
「いや、いい」
本当は今日二番隊は皿洗いの当番だって教えなくてはいけない。だけど、さっきすれ違った二番隊の人がどうせ隊長、水には弱いからと苦笑いして背中を押してくれた。中々愛されているようだ。私は、エースくんの隣に腰を下ろす。立って私の胸元ぐらいしかなかった背丈も、今や見上げる大きさだ。男の子の成長って恐ろしい。
「名前に会ったら、言おうと思ってたことたくさんあった。……でも、なんつーか、何にも浮かばねぇもんだな」
その気持ちは分かる気がした。たくさんの人に会って、たくさんの人に伝えたい何かがあった。でも実際にその人が目の前にいると、どうにも言葉が出てこない。エースくんに会いたい。エースくんを守りたい。その気持ちは、別れたあの日から持っていたはずなのに、それを伝えようと、どうしてか、今は思えない。
「教えてよ、エースくんの今までのこと」
知りたいんだ。──私が言うと、彼はおう、と笑った。
「あー、名前が出発した後も、それまでと同じように俺たちは暮らしてた。飯を取りに山に行って、時々フーシャ村に下りて、そういえば、マキノがすっげぇ寂しがってたぞ。ルフィもしばらくは寂しそうにしてたけど、海に行ったらまた会えるって教えてやったら元気になって。ホント、単純なやつ。で、俺はーそうだな、何も話すことねぇなァ。あ、名前が残して行った畑。よく分かんねぇ野菜がたくさん生えてたぞ。ダダン達もちょっと困ってた」
「やっぱり育ててくれたんだ?」
「…………。で、なんの話だ」
「エースくんが大きくなってからは?」
「ああ、17の時に村は出た。そこからメラメラの実つぅ悪魔の実食って、泳げなくなって、海賊団作ったな。船も買ってよ、調子乗って何度か落ちた」
「エースくんらしいね」
「んで、名を上げるために四皇ぶっ潰そうって、ここまで来た。完敗だった。あんなにボコボコにされたのは、クソジジイとダダン以来……って、クソジジイはあれな、ルフィの爺ちゃん。そんで、俺の息子になれって言われてよ」
「うん」
「最初は嫌だった。でも、今はここが俺の家で、あいつらみんな家族だ」
「うん、良かった。──本当に良かった」
照れ臭そうに自分のことを話すエースくん。私がびよんとその頬に手を伸ばせば、「今頃挨拶か」って。そうだ、そんな設定あったね。