「海賊?」
「ああ、最近ここら辺の海域はよく出るらしくて、この連絡船もキャンセルがたくさん出たんだとよ」
「それは……恐ろしいですね」
「お嬢さんも、女の一人旅なんて危ないんだから気をつけなよ」
「はい、肝に銘じます」

草臥れたシャツを着た船員さんが、ヒラリと手を挙げて去って行く。海賊も、私が前世で読んでいたワンピースには正義のために戦うような些か海賊と呼ぶのも怪しい人たちがたくさん出て来たが、現実はそう甘くない。海賊王なんて壮大な夢を持っているのは力のあるひと握りだけで、大抵は郎党の寄せ集めのような犯罪者集団だ。殺人強奪放火。一人歩きをする中で耳にした醜聞は数え切れない。その度に心ある人たちからは「女の子が一人で旅なんて」と言われてきた。仰る通り。でも私はこの世界を見てみたくて海に出たし、その過程で出会った人たちにも恩返しをしたいと思ってる。つまりはこの旅を止めるなんて無理なのだ。

次の島まで運んでくれる連絡船。グランドラインではこういった船が結構多く、危険を承知で誰かの船に乗せてくれと頼むことも少ない。都会はいいね。都会とは呼ばないんだろうけど。

久しぶりに姿を現した神さまは何やらお疲れの様子で、挨拶を交わすとすぐに私のバッグの上でぐでんと寝てしまった。神さまって疲れたりするんだと思った。随分と庶民的な神である。

一人旅の悪い点は話がしたい時に話をする相手がいないこと。その点、ポーラータングは良かった。話したいときに誰かと話すことが出来た。思ったこと感じたこと、くだらないこともちゃんと共有できた。みんな、元気だろうか。うーん、元気だろうな。この前、いよいよ初めて船長さんに懸賞金が付いた。手配書はそれはもう柄が悪いし顔色も悪い。相変わらず寝てる?と問いたくなるレベルのくまだった。本当はもっとカッコイイんだぞと思いつつ、丁寧に折り畳んでカバンに挟んだ。だって、なんか捨てられない。ついでに、取り出した船長のビブルカードを確認する。顔色は悪いけど体調は万全らしく特に変化もなくて安心した。また会う日まで。そう約束したからには、私も健やかにいなくては。よし、頑張ろう。

次の島を経由して、当面の目標はシャボンディ諸島にしている。あそこはインペルダウンも海軍本部も近い。どうにかして頂上戦争に潜り込む術を考えなくては。時間は刻一刻と迫っている。

「おい、海賊船だァ!」
「早く避けろ、あらァ四皇の船じゃねェか」

What。意気込んだ傍から命の危機なのだろうか。バタバタと甲板を走り回る船員さん。私も船尾の方へ移動してあっと驚く。大きな白い鯨が悠々と海面を泳いでいる。そして、そこから轟々と火を足元に蓄えて、海を移動する小型船。オレンジのテンガロンハットを手で抑えた彼が、私たちの船の横につけ、そして唖然として海面を見下ろす私を見つけた。

「……約束通り、会いに来たぜ名前

軽やかに、縁に飛び移った彼は、大きな大きなエースくんだった。