どうしてこうなってしまったんだ、と私は頭を抱えた。私は不幸なのか?そうなのか。どうしようどうしようと焦りを募らせたところで、どうにかできる問題ではないことは明白だ。今はひたすら、時間が解決してくれるのを待つしかない。というか、いつもそうだ。自力で道を開けたことなんて「おい。名前とか言ったか」「はい?」

「いつまでそんな隅にいるつもりだ」

できればずっと隅っこにいたい。そして私のことを忘れてほしい。地上に帰して。

「スカイピアの馳走を用意した。たらふく食え」
「あははは」

……ありがとう、ございます



ここで時間は、半日前に遡る。

ハートの海賊団に別れを告げて早くも1ヶ月の月日が経った。商船を乗り継いで島から島を渡り、時には初めて客船なんて洒落たものを利用して、楽しくやっていた。客船には毎朝ニュース・クーが届けられて、流石だなあと感心したり。そしてついに、エースくんの手配書が載った。スペード海賊団・火拳のエース。ニヤリと笑う姿はすっかり大人になっていて、私が原作で知る彼に大分近い。もうそんなに時間が経ったのかとしみじみしていたところまでは良かったんだ。

着いた島は、南国情緒溢れる島で、海賊や金持ち観光客向けにリゾート地になっているんだとか。へえと思いつつ、降り立って、ホテルにチェックイン。荷物を置いて、散歩しようと外に出た。ガイドの話通り、柄の悪そうな人たちもたくさんいたので、中心部は避けてもう少し落ち着いたところでご飯でも食べよう、とぐんぐん進んでゆく。そしたら、あらびっくり。現れたのはハリボテの見たことある家。主人は留守のようなので近づいてよく見てみる。この半分しかない家は、間違いなくノーランドの家だ。つまり、ここはジャヤ。ああそう言えば、そんな名前を言っていたかもと聞き流したガイドの声が蘇る。本当にあるんだなと感心した。今はお宝探しの真っ最中だろうか。答えを教えてあげたいような気もするけど、空島の激闘がなくなるのは頂けないので却下。ノーランドさんには元気で暮らしてほしい。

「ちょっとアンタ何してんだ!」

振り返ると、屋台の前にぬらりと立つ大きな背中。筋肉のつき方は芸術的で美しい。それにしても、あんな長い棒を持っていたら周りに迷惑だ。おまけに背中に背負ったあの太鼓。雷神気取りか、変わった人。
――!?「エッ」ネル??(セーフ)

「食いたいなら金を払いな」
「何故そのような偉そうな口を利いているのだ。私は神だ」
「金を払わない奴はお客様じゃないんでね!神様でもないよ」

ピリリと張り詰める空気。今日は空気が乾いている。雷が落ちればそれはそれは効果覿面で即死だろう。相手がゴム人間じゃない限り。

「フン、愚か者め」
「うわあああ、ストーーップ!!」

すかさずおじさんとエネルの間に体を滑り込ませ、おじさんの手にお金を握らせる。ちょっと兄さんふざけないでよね、なんて引きつった笑顔も添えて。

「す、すみません。世間知らずな兄で、」
「金さえ払ってくれりゃ文句ねえさ。マイド!」

ジリジリと寄せられる視線を無視して、エネルの手をひく。あんなところ人殺しなんて堪ったもんじゃない。あのおじさんも、ここに店を構えるくらいなら能力者のすごさを知っておくべきだ。世話が焼ける。私に足を向けて寝るのはやめて頂きたいくらいだ。

「おいお前」
「地上ではお金がないと何もできません。以降、ご承知を!では」

少し行ったところで、ぺこりと頭を下げる。そんなにいつまでも面倒は見れない。「待て女」ギクリ。

「誰に対して物を言う?」
「あなたに」

えっ、私が殺されるの?だったらさっきのおじさん助けなきゃ良かったとか思っちゃうよ。

「――面白い」
「ほ?」
「我がスカイピアに、招待しよう」

ふぁっ!?