よく晴れた水曜日、港の真ん中で私はぺこりと頭を下げた。店長に息子のジョニーさん。本当にお世話になりましたと何度言っても足りない感謝の心を口にすると、店長は鼻を啜りながら寂しくなるねと泣いていた。本当に本当に優しい人だ。

「いつでもまた遊びにおいで」
「はい」

ジョニーさんから花束を貰う、手の中にはふたつめの花束。一つめは朝、常連さんから頂いたものだ。

「元気でね」
「おふたりも、皆さんも」

どうか健やかでありますように。この町の平和はスモーカー少佐、未来の大佐が守ってくれるから安心。

「じゃあ行ってきます」

仕事ついでに乗せて行ってくれるという商船に乗り込む。甲板から手を振ると、店長はやっぱり泣いてる。そして、その後ろに白の制服を着た大きな身体が見えて少し身を乗り出した。

「危ねぇだろ!」

ふふ、いつも通りですねスモーカーさん。

「お元気で!」
「危ねぇことすんなよ」

分かってます、と叫んだら丁度船が動き出した。大きく手を振って、そして親愛なる彼に向けて敬礼をする。それを見てフッと笑ったスモーカーさんは正義の文字を海風に揺らしていた。

さようなら、ローグタウン。おわりとはじまりの町。今日はおわりではなく始まりの日だと自分に言い聞かせた。いつの間にか隣に現れた神様がそれを鼻で笑う。こんな時くらい気の利いた言葉をかけてくれたっていいのにな。

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