「なあ」
「はい」
お会計を、と私を呼んだスモーカーさんは今晩の予定を尋ねた。予定と言われても働くこと以外することの無い私は今日も今日とて夜のお店に出るだけである。それをそのまま伝えると、そうか、と言って少し黙ったスモーカーさん。海軍の制服が今日もバッチリ決まっていて格好いい。
「そのあと、少し時間はあるか」
「えっ…と、」
私の仕事が終わるのは22:30、そこから片付けやら何やらを手伝っていたら大体いつも23:00になってしまう。そのあとの予定は勿論ないけど、あんまり遅い時間になったらスモーカーさんに申し訳ない。
「今日は名前ちゃんは21:00で仕事上がりだぞ」
「て、店長?」
「いいよ、たまには遊んでくれば」
「…じゃあその時間にまた来る」
仕事頑張れよ、と笑ってスモーカーさんはお店を出て行った。既にポケットから葉巻を取り出していたのを私は見逃していない。ヘビースモーカー、名前の通り。
「お店ひとりでも大丈夫ですか?」
「今日は21:00閉店にしよう」
「もう」
本当に大丈夫か、この人。
「それにしても用事でもあるんですかね、スモーカーさん」
いつもお店にご飯とお酒を楽しみに来るだけなのに。私を誘って何をしたいんだろう。教えてくれれば前もって準備をしておけることもあるかもしれないのに。
「明日は海が大時化かもしれないねぇ」
「分かるんですか」
「分かるさ、あの少佐が女の子をデートに誘うんだから」
「デートってそんなに大袈裟なもんじゃ」
…無いかどうかは分かりません。けど!それってスモーカーさんの沽券にかかわることでは。私は全然良いけど。
「若い男女が夜に会う約束をすることをデートと呼ばずになんと呼ぶんだい?」
「ぐ」
そう言われると、それはデート以外のなにものでもない。言葉に詰まる私を店長はさも愉快そうに笑った。あの大人スマートで、原作ワンピースの頃よりフレッシュなスモーカーさんとデートだなんて私の心臓持つだろうか。不安しかない。
あ、外行き用の服もないや。こんなことなら1着可愛いのを買っておけば良かったかなあ。まさかデートする機会訪れるなんて欠片も思わなかったし、ルフィたちのところにいたときは動きやすさが何より大事だったし。
「お昼の片付け終わったら綺麗なワンピースでも買いに行こうか」
神か、この人。