ごはんの席、この時だけはみんなが一堂に会して、私の作ったご飯を食べる。いま思えば、大勢で食卓を囲むのはとてもとても楽しかったなあ。

「わたし、明日発ちます」

 箸を置いて、ぺこり頭を下げる。ルフィくんは箸をバタバタ落として口を開きっぱなし。エースくんは手を止めたけど何も言わなかった。

「もう少し居ろよ!」
「ありがとう、ルフィくん」

 でもね、もう行くって決めたんだ。自分で言っておきながら堪らなく悲しい。ぐぬぬぬと唇を噛み締める姿に胸が痛んだけれど、それだけ良い仲間だと思ってもらえたならそれはそれで嬉しい。ありがとう、ありがとう。でも、いつか来るサヨナラを君はもう少し知らなきゃいけない。

名前ちゃんの飯美味かったのになァ」
「寂しくなるぜ…」

 山賊が口々にそう言って、わざとらしく鼻をすするのは割とシュール。でも本当に良くしてもらっちゃったなあ。

「本当にお世話になりました」

 最後まで、エースくんは何も言わなかった。



 夜、すっかり川の字で寝ることが定着した私たちはお布団と寝袋を3つ並べていた。ルフィくんは寂しい寂しいと言いながらも睡魔に負けた。今は私の左腕にしがみついて寝てる。

「エースくん怒ってる?」
「……別に、」

 ハハ、可愛いなあ。エースくんもそれなりに寂しいのか光栄だ。

「エースくんのおかげでね、私すごく楽しかったよ」

 もちろんルフィくんのおかげでも、ダダンさんたちのおかげでもあるけれど。それでもエースくんが私に優しくしてくれたこと笑わせてくれたこと、本当に本当に幸せだったんだよ。だから、エースくん、きみは人を幸せにもできるってことどうか覚えていて欲しい。ハナから望まれた命だったとは言えないけれど、それでもきみが生きていくことを願う人だって沢山いることどうか忘れないでいてほしい。

「ありがとう、エースくん」

 私がそう言うと、エースくんは身体をこっちに向けて少しだけ近付けた。だから私は右手を伸ばしてそのほっぺたを引っ張る。もちもちだ。

「…何すんだよ」
「ん? サヨナラの挨拶」

 ほら、私の国の挨拶なんだって大嘘、いちばん初めについたでしょう。

「また会えるって言った」
「うん。でも今はお別れだから」

 また会うことがあったなら、またそのほっぺたをぴよーんと引っ張ってあげますよ。

「俺が見つける、会いにいく」
「…じゃあどこかで待ってる」

 私の布団に入ってきたエースくんを抱きしめて頭をポンポンした。どうか元気で。

「私のお野菜たちに水あげてあげてね」
「覚えてたらな」

 きみはきっと忘れないさ。