エ~~ズゥ~~~!!!と泣きつくルフィくんと泣きつかれるエースくんを見て、心の底から安心する。ダダンさんを背負ったエースくんと私は漸くこの家に戻ってくることが出来た。全身火傷のダダンさんも思ったよりは悪くなさそうで本当に良かった。
「名前も、心配しだんだどぉぉ」
「ごめんね、ありがとう」
涙でドロドロの大天使ことルフィくん。しゃがんで頭をぽんぽんすれば抱きつかれたのでそっと抱き締め返す。ああ、人って温かいんだなあと久しぶりに思った。
家の真ん中にダダンさんには寝てもらい、エースくんが事のあらましをみんなに説明する。それを聞くとルフィくんはさっさと家の外に出てしまった。まだ帰らないドグラさんが今度は心配らしい。優しいっていうのは忙しないもんだ。
「エース…おめぇあの時なぜ逃げなかった……」
ダダンさんが訊ねる。エースくんの答えは私が想像していたこととピタリ重なって、口許が緩んだ。お兄ちゃんっていうのはいつの時代も損する生き物なのかもしれない。それは彼等にとってきっと不幸ではないのだろうけれど。
さてさて、私はご飯を作らなくちゃと立ち上がれば怪我してんだから休めと言われてしまう。
「私なら大丈夫───」
ですからお気遣いなく。そう言いたかった。それをかき消すように勢いよく開かれた扉からルフィくんとドグラさんが入ってくる。そして告げられた真実は、幼いふたりにはあまりに悲しいものだった。盃を交わした兄弟の死。頭の中で遠い昔に読んだページを開き直せば、確かにそこにもうひとり特徴的な帽子を被った貴族の少年がいた。
泣き喚くルフィくんに暴れるエースくん。それを怒鳴るダダンさんは誰よりふたりを思っての行動なんだろう。縛り付けられたエースくんは泣き続けるルフィくんを外から叱った。私はサボに会ったことはないし、紙面でしか見たことのない前世の記憶を持っているだけの一般人。例え彼が本当は生きていると知っていたとして、それを教えることは出来ない。結局わたしってなんにも出来ないなあと思ったらちょっと泣ける。立派な刺青が訳もなく恨めしい。
「…名前」
「なんでしょうか」
「今はエースに会いに行くんじゃないよ」
「……」
「それも人の人生さ」
ダダンさんの言葉にはいと返した。その夜、私は泣き続けるルフィくんの横でずっとずっと彼の背中を摩っていた。