こんにちは、名前です。雲の上から突き落とされた私はどうやらあの時の神さまの言葉通り人生をやり直すはめになったようで気がついたら今の両親の子供としてこの世界を生きていました。

しっかりちゃっかり前世の記憶もあるし何故だか知らないけれど昔から心の中は死ぬ前と同じ年齢だから必死で子どものふりしてやり過ごすこと13年。漸く年齢が中身に伴ってきた。両親は至って普通。母親は酒場の店主、父親は海賊。そう、海賊。どこが普通なんだと過去の私なら盛大に突っ込むところだけれど、ここはかの有名なワンピースの世界。それに気がついたのは確か5歳くらい、お店に来た人達が楽しそうにやれゴールド・ロジャーだ、やれ世界政府だ等と話していたのを聞いて確信した。初めはそりゃあ泣いて驚いたけれど、何せ神様とご対面して吹き飛ばされたくらいだからこんなこともあるかと納得した。メンタルだけは昔から強い。

まあお察しの通り、父親は海に出たきり滅多に帰って来ないけれど母はそれでも良いらしく毎日楽しそう。私も別に生活が苦しくないならそれで良い。ワンピースの世界とは言え世界は広い。主要キャラと会うこともなくのんびり暮らして死ぬんだろう。

「おい、そこの若いもん」

いつか聞いた声。バッと振り返ると目の前に神様が降り立った。実に13年振りの再会である。お久しぶりです。

「……ワシを覚えているか」
「はい」

いやあだってあんたが私をこの世界に突き落としたんでしょうが。誰が忘れるもんかと言いたいところを押しとどめて、そりゃあまあと適当に濁した。神様がこんな所にいきなり現れていいのかとキョロキョロするとあらびっくり、周りの人がカチコチに固まってる。

「安心せい、時間を止めておる」

そんなことも出来んのかい。

名前、お前にいくつか言わねばならんことがあってな」
久しぶりにこうしてやって来たという訳だと神様は笑った。何が楽しいかは知らない。只の巫山戯た爺さんかと思いきや、こんな能力見せつけられたら誰だって怖い。

「まず第一にここはお前が前に生きていた世界で流行っていた海賊王になるとかいうゴム人間の漫画で、「ワンピースの世界なんですよね」
「そう、そうじゃ。気付いておったか」
「まあ」

最近じゃあ巷で赤髪やら白ひげやら話しているしね。

「それでじゃな、これはワシのミスじゃ」

神様はあごひげを触りながら、うんうん唸ってる。簡単にまとめると本来なら私が前いた世界(つまり普通の世界)に落としてもう一度人生をやり直させるつもりだったけれど、久しぶりに団扇を使ったせいで力加減を間違えてこっちの世界に飛ばしてしまった。私はこの世界に生きるはずのない人間だったのだとそういうことらしい。まじウケる。

「すまん」

謝罪の前にすまんで済む問題なのかどうかを教えてほしい。これこそ本当に死活問題だ。

「この世界はお前が生きるには、ちと過酷じゃ」
「そうですね」
「そこでじゃ、これが今日言いたかったことの二つ目じゃ」