生きて再会しよう、そう決めた次の瞬間には命が危うい。ここはそういう世界である。

 私の解釈では、ローさんはシーザーを攫ってこいと言ったが、きっとそれはローさんが動く裏でこっそりやれよみたいなニュアンスだったように思う。しかし、「こっそり」や「地味」という言葉とは対極に生きる彼らに、そんなニュアンスが通じているわけもなく、ド派手に敵地の中心地に降り立ってしまった。速やかに死亡フラグは立てられるものである。

 いつでも元気いっぱいなルフィくんに真っ先に気がついたのは、スモーカーさんたちで、あ、やばいと思ったが、どうやら彼もローさんの能力で、たしぎさんと入れ替わっているらしい。

 到着して早々、私は言われていた通り、みんなから離れ、なんとか安全とは言い切れないけど、戦いに巻き込まれそうな位置で待つ。邪魔者はさっさと戦場から消えなくては。ロビンさんの後ろに隠れて降り立ったせいか、目立つことなくその場を離れることに成功。危なかった、と一息ついたと思ったら、今度は空からなんかスライムみたいな怪しげな物体が降り注いでくる。

 この地に安息などなかった。

 毒を発しながら動き回る謎の生命体。あのシーザーとかいう科学者が開発したそれは明らかに対人兵器。この力が全ての『ワンピース』の世界で、毒で対抗しようとするのは、展開的には面白いかもしれないが、当事者にしたらたまったもんじゃない。

 堂々と現れたシーザーに、堂々と捕まえに行ったルフィくん。さて、この後はどうなるんだっけと、思い返している間にもどんどん時間は進んでいく。

 研究所の上で、何やら爆発したり飛んだり殴ったり派手に戦ってはいるが、戦況は不明。遠くから眺めていることしかできないのがこんなにももどかしいとは……。本当に何しに来たんだろ、私。

「何が起きた……」
「分からねェ……!!」

慌てる海軍サイド。大した攻撃も加えずに、麦わらの主力とスモーカーさんたちが倒されればそうなるのも無理はない。

 私は逃げなければ。そう、思うのに雪で早くは走れないし、怖くて足もうまくは動かない。音を立ててもダメ、捕まってもダメ。何もかも、だめ。これ一般人には無理すぎる。

「待ちな」
「ヒッ」
「今日はローと一緒じゃないんだねェ」

お嬢ちゃん、とおぞましい笑みが目の前に浮かぶ。まあそうなるよね、と苦笑いしたら、鮮やかに鎖でぐるぐる巻きにされた。

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「何だか懐かしいわね、あなたたちが同じ檻にいると」
「そうそう おれとケムリン、アラバスタでお前らに捕まった事あったよなー」

あったよなー、じゃない。呑気すぎる。メンタルどうなってんだ。頭を抱えて泣きたい気持ちだったが、あいにく縛られてそれもできない。唇噛み締めるのが関の山。ヴェルゴさんが言う『豪華な顔ぶれ』を汚しているのは、確実に私である。申し訳ない。

「なんで逃げなかった」
「生きてるだけで褒められたいです」

ハア 大きなため息が横から聞こえてくるが、ため息を吐きたいのは私の方だ。こんな超人博覧会みたいな場所に、凡凡人を放り込むなんて。神様が、今も隣にいたら盛大に笑われそう……

「……おい」
「あ?」
「お前じゃねえ」

じゃあ誰だ、と噛み付く寸前のローさんと、その向こう。どーんと構えた綺麗な女性。たしぎさんとばっちり目があう。

「お久しぶりですね、……スモーカーさん?」
「やっぱり名前か」

自然と、笑みがこぼれた。