「“ハートの海賊団”と同盟を組む~~~!?」

驚いているのは、ウソップさんとサンジさんの顔したチョッパーさん。ハートはもちろん船長独断だが、あちらもそうだったらしい。慌ててウソップさんとチョッパーさんが止めるのは、ワンピースではもう見慣れた光景だろう。破天荒な船長がいると苦労する。

 麦わらの頭脳であるロビンさんが、同盟には裏切りが付き物だとルフィさんに釘を刺す。しかし、そんなことを気にするような器の小さな男でないことは、私よりも彼らの方がよく知っているところだろう。

「心配すんな! 俺には2年間修行したお前らがついてるし、あっちには名前もいるからよっ!」

ああ、ルフィくん良いこと言うなあ、なんて思っていたら急に私の名前が飛び出した。

「わ、私……!?」
「あら、貴女も来ていたの」
「お久しぶりです」

どうも、と愛想笑いをすれば、隣からぶっと小さく吹き出す音がした。笑うな。私はこう見えてルフィくんのことは家族みたいに思っているし、ルフィくんだってそれなりに私のことを思ってくれてる。これは信頼である。ルフィくんの頭が悪いのではない。

 それからルフィくんたちは巨大化された子供達のことについて話し始めた。まあ、なんとなく察する。ルフィくんたちに正義の心はないが、根は優しい人たちだし、曲がったことは基本好かない。おまけに、ナミさんやチョッパーさんがこの子たちを助けたいと言っていると言うのだから、麦わらの一味の方向性は決まったようなものだ。みんなの方向性を尊重する。舵を取るのはその時々で違うが、ルフィくんの言うことはみんな従う。似ているようで、うちと案外似ていない。

「お前、俺たちと同盟組むんなら協力しろよ」

あっけらかんと言ってのけた、ルフィくんに絶対そうくると思ったと、頷いたのは私とウソップさん。「は?」とデカデカ顔に書いたローさんを見て、今度は私が吹き出すどころではなく大笑いしてしまった。おまけに、その後、薬について調べるためにチョッパーさんと潜入することになったローさんが、頭に小さなトナカイを括り付けられているのを見たときは、死ぬかと思った。笑いすぎたのと、そのせいでバラされそうになって。流石に恋人にバラされたなんて、みんなの中で一生ネタにされるから嫌。普通に怖いし。

 ローさんはチョッパーさんとともに一足先に研究所内へ戻る。ルフィくんたちはその間にシーザーを捕まえるという作戦らしい。

「考え直せるのは今だけだが?」
「大丈夫だ! お前らと組むよ」

気持ちのいい返事。にっこり笑った彼を見て、ローさんは小さく息を吐いた。そして、そっと視線を私に移す。言われることは、なんとなく分かる。

「今回は流石につれて戻る訳にはいかねえ」
「はい、分かってます」
「麦わら屋、こいつを頼む」
「ああ、いいぞ! 任せとけ」
「危険なとこに首を突っ込むんじゃねえぞ」
「そっくりそのままお返ししたいところですね」
「あとでな」
「約束ですよ」
「ああ」

彼がさらりと私の頭を撫でる。大丈夫、大丈夫と言い聞かせ、笑顔で見送る。鬼哭に結ばれてしまったチョッパーさんに、「ローさんを頼みます」と言えば、すごくやる気に満ち満ちた顔で頷かれてしまった。二人とも無茶しなきゃいいけどな。

「じゃあ行くぞ、おめーら!」
「おうよ、派手に行こうぜ」
名前!」
「ん? なに、ルフィくん」
「そんな顔すんな! 俺もトラ男もつえーから!」

ルフィくんが、ゴシゴシと鼻の下をかく。彼の言う通り。みんなは強い。どう考えても、この島の生命体で一番弱いのは私だ。気抜いたら死ぬかもしれない。呑気に恋人の心配なんてしている場合じゃない。

「うん、ありがとう! よろしくね」

パチンと手を合わせる。手袋のせいで良い音はしなかったけど。頑張ろう、ちゃんと生きて、彼ともう一度会わなくては。