なん悶着あったか分からないが、ひと段落ついたのか、ローさんと二人、研究所の裏口から脱出する。お化けみたいな格好した見張りが、どこへと尋ねる。

「今……近くに海軍の奴らが……!」
「知らねえよ」

今のローさんは、結構不機嫌なので、あんまり話しかけない方がいいと思う。そう思った瞬間に、バラバラになった。雪山でバラされた時の心情、考えるだけで恐ろしいので考えない。

 さっさと道を急ぐ彼に続き、私も雪道をすべらないように踏みしめた。もうパンクハザードで生活をし始めてしばらく経つが、こんな大雪には慣れるはずもなく。いつまで経っても危なっかしい歩き方しかできない私に、ローさんは盛大なため息を吐いた。ごもっとも。

「ほら」

差し出された手。彼は私の運動能力を過小評価しているので、こういう時には絶対に手を出される。嬉しいけど、恥ずかしい。何より、情けない。

「一緒に滑ったら危ないので、」
「自分の心配だけしてろ」
「う」

なんだかんだ一人で歩こうとするのに、結局丸め込まれてしまうのもいつものこと。決して嫌な気持ちはしないけど、一人でも歩ける彼のことを思うと、やっぱり情けないなと思ってしまう。

「さっき海軍の方がいるって言ってましたけど」
「まだ裏口には回ってねえだろ」
「じゃあやっぱりさっき表で戦ってたのは……?」

ぎろり ローさんが私の方に疑わしげな視線を向けてくる。見てないです!顔も出してない!と必死に弁明すれば、ふ~んと少し笑われたので、信じてもらえたみたいだ、多分。……多分。

「白猟のスモーカー」

厄介なのが来た、と顔を顰める。ドキドキと波打つ胸がバレないように、そっと、「殺しちゃいましたか」と尋ねてみる。いいや、と否定されて確かに安心した自分がいた。

「それがどうした」
「いえ! なんでもないです」

仕方ないじゃないか。今は敵でも、彼は私の―――

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「チッ 少しはおとなしくしてられねえのか」

 ローさんが舌打ちした方向を見ると、雪山でドッカンドッカン大騒ぎ。考えなくとも、ルフィくんたちであることは明白だ。主人公なので如何しようも無い。いいや、ルフィくんの場合、そういうのとは別である気がしなくもないけど。

「ここにいろ、後から来い」
「あの中突っ込んでいくんです?」
「問題ねえ」

彼はさっと私の手を離し、そのまま雪の上を進んでいく。背負っていた鬼哭を構え、一刀両断。それはそれは見事だが、今後これが続くのかと思うと気が気じゃない。何個心臓があっても足らないな。ローさんに言っていくつか貰おうか、なんて冗談。ああ、私も少しずつ染まってきちゃったな。

 事態が落ち着いたようなので、いそいそと私も彼らの元へと向かう。雪は滑りやすい。さっきまで繋がっていた左手が物寂しい。こうやって、彼なしで歩けなくなってゆく。わざとか、何も考えていないのか。ローさんに限ってはわざとだろう。

「『四皇』を一人、引きずり降ろす策がある……!」

 こうして、麦わら海賊団とハートの海賊団(まあ船長の独断だけど)の間に、海賊同盟が成立した。私は証人、否、目撃者。

「あっ! 名前!」
「久しぶり、ルフィくん」