「……良かったですね、先輩」
すずちゃんこと天使は、今日も当たり前に可愛い。ニコッと笑った顔をわたしに向けてくれるのは、なんだかとっても勿体なくて気が引ける。
「色々、お世話かけました」
「いいんです、ハッピーエンドなので」
「ありがとう、すずちゃん」
どういたしまして。やっぱり、天使は天使。
「流川さん、心配要らなかったみたいですね」
「え?」
「恥じらうタイプだとは思ってませんでしたけど、思ったより思い切りが良くて驚きました」
まんま、わたしの台詞である。あんな恋愛のれの字も知らない風を装っておいてあんまりだ。ただの言語の不自由な肉食動物だった騙された。
「あれであの顔で、バスケットまで上手くて、さぞモテるでしょうね」
天使こと小悪魔が、可愛い顔してわたしを困らせて遊んでいる。最近の若い子たちには敵わない。こんな平凡な人間弄んでなにが楽しいというんだ、言ってみろ。
「まあ、それは当面の一番の問題よね」
「ここにいた時も大人気でしたもんね」
そういえば、最近あのおばちゃん達来ない。流川楓、恐るべし。店長が泣いてるよ。
「飽きられないように努力します」
「……必要ないと思いますけど」
「すずちゃん、おすすめの化粧品教えて?」
「そういうことなら大歓迎ですけど、実際流川さん先輩しか見てないので、不安はご無用です」
「そうかなあ」
心変わりは人の世の常と言うじゃありませんか。わたしが流川を好きなのは圧倒的運命の暴力として、流川がわたしのこと好きになったのはまぐれか奇跡か、今となっては分からない。それに私も世の中の乙女宜しく、一丁前に努力をしてみたって悪くはないはずだ。
「じゃあ週末お出かけでも?」
「行く行く」
変わることも変わらないことも、同じくらい大切なのだと、きっときみが教えてくれた。
「今度お店来るって言ってましたよ」