「来るのも突然なら、出て行くのも突然なんだねェ」
ハッとして振り返ると、そこには腕組みしたダダンさんがいた。慌てて周りを見れば、ダダンさんは私だけだよと言った。あら、お見通しだ。
「すみません」
「人生そんなもんだよ」
ダダンさんは私の目の前まで来ると、小さなナイフを取り出して差し出した。やるよの一言でそれが私への贈り物だと気付く。何とも山賊らしいプレゼント。
「護身用さ、なんかあったらこれでやりな」
「何も無いことを祈ります」
受け取ったそれは服の下に仕舞う。女の一人旅、こういうことも勿論大切だ。対人用で使うことがなければ良いけど。
「強い女になんな」
「はい」
15の私を守ってくれて、大切なことを教えてくれて、一人前に扱ってくれて本当にありがとうございました。深く頭を下げる。恩返しする機会は…多分ないけどこの御恩は一生忘れません。
「本当に、お世話になりました」
「あァ」
なんかあったらいつでも頼んな。その一言で緩みかけた涙腺をグイッと引き締め、それじゃあ行きますと敬礼した。私が背を向ける、ダダンさんもややあって歩き出す音がした。また船出だ。さて、次はどこへ行こうかな。
「まだ春の鼓動を知らない」〆
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