今日だけで喉が枯れてげっそりとした気がする。多分気がするだけだけど。ありえない道を平然と兄弟は進んでいくもんだから私が異常者なのかと錯覚した。けどこうしてゆっくり考えてみると、やっぱり彼等がおかしいのだ。

「じゃああとはよろしくな!」

俺らは狩りの時間だと私を山の中の大きな家の私に置いて、二人はまた山へ帰っていった。大きな家に負けず劣らずの大きなこの人はダダンさんその人である。ああ、ふたりの仮親だった山賊かと思い出した時には既に遅し。腕組みして顔を顰めるダダンさんはかなりご立腹のようだ。

「ここは民宿じゃないんだよ」
「は、はい、…それはもう存じております」

けれど二人に拾われた命。ここで山賊にビビって野宿だなんてそれこそ恥ずかしい。誠心誠意、頭を下げて今日一日だけでいいから泊めてほしいと頼み込む。掃除洗濯料理、もう何でもする。お金も少しなら払えると言うとダダンさんは大きく大きくため息をついた。

「本当に何でもやんだね」
「もちろん!」
「入んな」
「…ありがとうございます…!」

命救われたり。家の中でもう一度頭を下げると、そんなことはいいからと荷物を取られてそれは部屋の隅へとぼふっと投げ飛ばされた。結構重たかったのにあんなとこまで。荷物を取られた私はというと、目の前に掃除道具と溜まりに溜まった汚れた皿に衣類を積まれて「頼んだよ」の一言。ううむ、主婦の労働対価を考えても宿代にはならないと思っていたけどこの量なら素泊まり代金くらいにはなりそうだ。



その夜、やっとの思いで頼まれ仕事を終えるとすぐに二人がでっかい野牛2頭を引き摺って帰ってくるもんだから後ろにコケた。でっけぇ。そしてそれを調理するのは私である。ヘルシー海賊団に頂いた野菜も合わせて、全員分の料理をご用意した。あんなにも大きな動物を解体するのは初めてだったけれど、さすがは山賊と褒めるべきか恐れるべきか、大きな刃物はいくつかあったので力任せにやってやった。野牛のローストと野菜の素揚げは中々美味しくできたのではないだろうか。バクバク食べるふたりと山賊の皆さんの勢いに押されて、私は肉には手をつけられなかった。野菜で満腹になったので全く構わないのだけれど。

「お前、料理うめぇんだな!」

ルフィくんの言葉に山賊の皆さんも本当だ本当だと言ってもらえて、私は心底安心した。そのあとはルフィくんに山のことについて少し教えてもらったあと、寝ることに。アンタもここでいいねと用意された部屋は、ルフィくんとエースくんが寝ている部屋だった。まあそうなるよねと苦笑いして部屋の隅に寝袋を準備する。結局、エースくんはおやすみの一言も言ってはくれなかった。