「お前、今日はどうすんだ」
ルフィ──改め、お友達(になったと私は思っている)のルフィくんがあっけらかんと尋ねた。野宿かなと言うと楽しそうだな!と笑うルフィくんは本当の本当に馬鹿である。野宿が楽しい訳ない。寝袋あるからまあいいかとさっきは思ったけれどよく考えたらこんな何がいるか分からない森のそばは危険すぎる。朝起きたら虎の胃袋の中でした~とか全く笑えん。そりゃあ死んでたら笑えないのは当たり前なんだけど。
「でも、この森結構危ねぇぞ」
「だよね」
森の中に家とか無いかな。そう言えば小さい頃のルフィとエースはどこで暮らしてたんだっけ。シャンクスとのところしか覚えてない。すまん。
「なあエース、こいつダダンのところに連れて行こう」
「へ」
「はあ?」
そうしようと腕を空に高く突き上げたルフィくんと、馬鹿野郎と殴りつけるエースくんは対称的な顔をしていた。
「なんで俺らが面倒見なきゃいけねぇんだ」
そんな義理はないというエースくんは至極正しい。それはそう、そんなことをしてもらう義理はないのだ。「うん、それは悪いし、」大丈夫だよと伝えようとしたとき、ルフィくんの大きな声が私のありがとうをかき消す。
「でも、俺はこいつに生きてて欲しいぞ」
エースくんがハッとしたような顔になる。少年よ、私が野宿したら死ぬことは確定かい。全くもって本日二度目の心外である。そりゃあ一週間生き抜けと言われたら多分死ぬけど、一日くらい寝ずに過ごせばやり過ごせるし火をたけば猛獣なんかはやって来ないって前世のテレビでやっていた。私は信じる。だから平気だと思いたい。
「私なら大じょ「それに、俺らもうあいさつもしちまったしな!」
しししとルフィくんが私の頬を片方引っ張った。全然痛い。私の身体はゴムではないことを忘れないでほしい。チッと舌打ちをしたエースくんは、何故か空いている方の私の頬を引っ張り、着いてこいとぶっきらぼうに言った。なんか知らんけど許された。むっちゃ痛いけど嬉しい。
「はひがほう」
何言ってんだおめぇと盛大に笑われる。年上を馬鹿にするとはいい度胸だ。ダダンさんの元に連れて行ってくれるご恩を返そうと思ったけど止めた。ちっこい兄弟の背中を着いて荷物を抱え直した。ほっぺが痛い。でも足取りは軽い。探検なんて初めてだと心踊らせる私は、道ならぬ道を進まされる恐怖をこの後知ることになる。